2012年2月 9日(木)

ウクライナ・ベラルーシ視察から生かしたいこと : 宮田育治(郡山医療生協専務理事)

020901.jpg 宮田育治(郡山医療生協専務理事)

 

 私は、10月31日から11月7日まで福島大学副学長・清水先生を団長とする「ベラルーシ・ウクライナ福島調査団」に参加した。短期間の調査であること、事故の規模や国や制度、地形や食生活の違いを踏まえながらも医療福祉生協が生かしたい点について感想を述べる。


(1)小学校に併設された情報センターの活動
 医療福祉生協は、主権在民の医療や健康づくりを「住民(組合員)参加」をキーワードに進めてきた。今後、汚染された郡山の地に住み続けていく上で大変参考になり、生かしたいこととしてまず挙げたいのは、小学校や公民館に併設された情報センターの活動である。
 ベラルーシ緊急事態省原発事故対策本部との懇談で「ソビエト政権時代、誤った情報が被害を大きくしたという反省から、子供達や若者への教育と情報の提供を重視し、汚染地域に情報センターを設置し活動している」という説明を受けた。そして実際にウクライナの国境に近いコマリン中等学校に併設された情報センターを視察した。この情報センターの特徴は以下の3点である。1.子供達が学校へ食品をもっていって、自らきのこや牛乳、人参などの汚染度を測定している。 2.汚染マップをはじめ、様々な教材が置いてある。 3.地域に開かれている。このように汚染地の小学校単位に住民(子供から大人まで)参加型で学校教育と結び付けて放射線教育と情報提供を行い、食生活に生かす活動は、大いに学び生かす必要があると思った。郡山医療生協として、核害対策室「くわの」を立ち上げ、情報集約、情報提供、放射線教育・学習、放射線相談窓口として機能を充実させる。


(2)汚染地域最前線での健康を守る体制
  第二に上げたいのは、汚染地域最前線の住民の健康管理と地域医療を担うコマリン地区病院の活動である。医療福祉生協の医療機関の大部分は、地域医療の最前線で組合員の健康管理や医療を担って活動している。そういう意味で、大変参考になった。また、甲状腺癌が唯一放射線との因果関係が証明されているわけであるが、これを発見、発掘していくのは中央の研究所などではなく地域の一医者であったそうである。日常的な地域医療、救急医療の充実が放射線から健康を守る体制として重要なのである。
 4,000人の住民が登録しているコマリン地区病院(日本では有床診療所か)には、ホールボディカウンターが設置され、医師3人体制で住民の健康管理と体内被曝検査が行われていました。検査結果に基づいた食生活改善を中心とした健康づくりプログラムや療養プログラムが用意され実践されていた。医療体制の最前線にホールボディカウンターが設置され、全住民対象に体内被曝検査が行われていることがポイントだ。この体制を汚染された郡山に当てはめるとホールボディカウンターは、最低80台必要だ。しかし、現実は2台しか設置予定がない。これで十分だというが、全住民が検査し終わるまで20年はかかる。


(3)最後に
 ベラルーシの人々は内部被爆はコントロールできると言っていた。それを実現するためには、今後30年以上の長い戦いの土台に、 主権在民の思想の具体化と住民参加の健康づくり、 地域づくりをしっかり据えること。 内部被爆対策として「いつでも、どこでも、誰でも食品と体の汚染度測定ができる体制」をつくることと「放射線教育と情報の提供」が汚染地で生き抜くカギになること。国や自治体に任せ切るだけでなく、 汚染地の医療福祉生協陣営に食品放射能測定器やホールボディカウンターを設置し、 戦う体制を構築することが必要です。これらの課題実現には、脱原発運動と結び付けた心を繋ぐ全国の連帯と支援が不可欠だと考えています。
 

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