2013年2月 1日(金)

放射線防護学を振り返る

水や空気の汚染除去は効果的に出来るが土では難しい


放射能汚染された水は沸騰させると消えるか?


 「汚染水」を沸騰させても、放射能を除去することは出来ません。蒸気になって水が減った分だけ残った汚染水の放射性物質の濃度が高くなります。ヨウ素131が溶けた汚染水であれば、後に残る汚染水の濃度は高くなるけれども、汚染水の量を大幅に減らし(容量を小さくして)廃棄処理を楽にすることは出来ます。


水に溶けた放射性物質は除去できるか?


 セシウム137,134が溶けた汚染水であれば、バーミキュライトという鉱物を使ったフィルターや電気的な状態を利用するフィルターを使って、100%近くを除去することが出来ます。
空気に混ざった放射性物質は除去できるか?
 空気中に拡がる放射性物質はウイルスと同じくらいの粒子で、それよりも大きい物も小さい物もあります。更に、ガス化してしまう物もあります。しかしこれらの多くは空気中を漂っているうちに、散りやすい蒸気のようなもう少し大きな物にくっつくことになります。現在では、1,000分の1ミリよりもずっと小さい穴を持つフィルターもあるので、この穴よりも大きい物や塵などにくっついた放射性物質ならば除去することが出来ます。原子力施設では、ヨウ素131を銀に吸着させるタイプのフィルターも使ってより効果的な除去をしています。


土に混ざった放射性物質は植物で除去できる


 「ファイトレメディエーション」が注目されています。セシウムはカリウムに、ストロンチウムはカルシュウムに似た性質なので、それらをたくさん吸収する植物を使って、放射性物質を吸収させようという方法です。その候補にヒマワリやナタネなどがあります。ヒマワリやナタネよりもたくさん放射性物質を吸収する植物はありますが、成長が遅かったり、栽培が難しかったり、繁殖力が強すぎて他の植物に悪い影響を及ぼしてしまったりと、いろいろな問題があります。またセシウムは土の表面に多く留まるので、出来るだけ広く根を張る植物であった方が良いなど必要な条件は多く、そうした植物の調査や研究が始まっています。
「ファイトレメディエーション」は万能ではないようです。

 

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「放射能正しく怖がる100知識」小出裕彰他監修、集英社

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