2013年2月 7日(木)

放射線防護学を振り返る

 「線量限度」はすべての人に対して一律ではない

 

国が考える被曝の線量限度


 線量限度とは、自然からの被曝と医療による被曝を除いて、やむを得ずに浴びる放射線の上限のこと。日本では国際放射線防護委員会(ICRP)によるリスク評価に基づいて、一般の人の場合、1年間に浴びた線量の合計が1ミリシーベルト、放射線にかかわる仕事をしている場合は5年間の合計が100ミリシーベルトとなります。
ICRPの基準は「100ミリシーベルトの被曝を受けたとき1,000人のうちの5人が、がんになる」とされる確率を基にしている。

 

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上図は10人の人が1,000ミリシーベルトの線量で被曝したとき、そのうち何人ががんで死ぬかを「しきい値なし直線仮説」に基づいて計算したときの値です。 放射線による健康影響の専門家である故J.W.ゴフマン博士はそれぞれの委員会に比べて2?4倍の値を算出している。またどの評価者でも、子供であればこの4倍ほどの値になると考えています。その後、両委員会は、この値を半分に改めた。
本教科書の監修者である小出裕彰氏らはゴフマン博士の評価を支持しています。

 

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上図はゴフマン博士の計算による年齢別放射線影響の比較です。
20?30才代の成人に比べて、0?10才代の乳幼児や子供は数倍も感受性が高く、逆に50歳代になると一桁も低くなることが解っています。年令が下がるほど影響が大きくなり、10才以下であれば100%の確率でがんで死ぬことになります。

 

子供は放射線の影響を受けやすい 


 細胞や遺伝子には修復機能がありますが、年令が低くなるほど細胞の分裂が活発であるため、修復するときのミスも起こりやすくなる。そのため、かりにがん化してしまったときには、その進行も速くなります。
また、骨の中には血液のもととなる「赤色骨髄」というものがあり、これが放射線の影響を受けると白血病の発症にかかわることが知られています。子供の場合、大人と違って、この赤色骨髄が全身にわたって分布しているため、より影響を受けやすい状態にあります。

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